(1)日本には、東京の言葉を土台にした共通語があり、全国どこにでも通用する言葉として、広く使われています。けれども、一方で、それぞれの地方には、その地方独特な言葉があります。その言葉を方言と言います。
方言は、その土地の風土や暮らしと深いつながりがあり、その土地その土地の味わいがあります。そして、自分が生まれ育った土地の方言には、誰もが強い愛着を持っています。
ふるさとのなまりなつかし 停車場の人ごみの中に そを聞きにいく
これは、石川啄木の短歌です。「ふるさとの方言が懐かしくてたまらない。私は、その方言が聞きたくて、停車場の人ごみの中にわざわざ出かけていくのだ。」と言う意味です。故郷の岩手県を離れ、東京で暮らしていた啄木は、ふるさとの言葉に特別の懐かしさを感じたのでしょう。
ところで、この短歌で歌われている「停車場」とは、上野駅のことだと言われています。上野駅は、東京の中心にあり、昔から東京の来たの玄関と言われていました。東北地方や上越地方から東京へ出てくる人や、逆に帰っていく人が、大勢乗り降りする駅でした。ですから、そこへ行けば、啄木は生まれ故郷の言葉を聴くことができたのです。
現在も、上野駅の人ごみの中からは、相変わらずふるさとの言葉で楽しそうに話し合う声が聞こえたきます。啄木のように、ふるさとの言葉が懐かしくて、上野駅にそれを聞きにいく人が、今もいるかもしれません。
(2)王:ずいぶん混んでいるわね。指定席の切符を取っておいて良かったね。みんな、青森のネブタ祭りに行くのかしら。
佐藤:ふるさとに帰る人も、多いんじゃないかしら。楽しそうに方言で話してる人が、いっぱいいるから。
王:方言と言えば、中国ほどではないけれど、日本にも、土地によって言葉の違いがあるわね。関東では「ありがとう」と言うのを、関西では「お起きに。」と言うんでしょう。
佐藤:ええ、どこに行っても、その土地の方言があるわ。
王:青森にも方言があるんでしょう。
佐藤:ええ、こんな会話があるそうよ。「度さ。」「遊佐」ねえ、分かる。この言葉の意味。
王:「どさ」「ゆさ」分からないわ。教えて。
佐藤:「どさ」は「どこへ行くの」って言う意味。「ゆさ」は「お湯に行く」、つまり「お風呂に入りにいく。」って言う意味なの。青森は寒い地方だから、あまり外で長い話をしないんですって。だから、挨拶も短く縮めて言うらしいの。
王:へえ、そう。方言って、やっぱりその土地の風土や暮らし方と関係が深いのね。寒いと言葉も短くなるなんて。
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